種牡馬の頂点イントゥミスチーフ。Spendthrift Farmの牧場見学。

アメリカ競馬

ケンタッキー州の牧場見学⑥

牧場を訪れたのは2025年3月のこと。

ケンタッキー州を代表するスタリオン牧場のひとつであり、北米競馬を語るうえでも欠かせない存在です。数多くの名種牡馬を繋養しており、近年は特にInto Mischiefの成功によって、その名声をさらに高めています。

今回は、そんなSpendthrift Farmを実際に見学してきました。

スペンドスリフトファーム(Spendthrift Farm)

種牡馬の繋養を行っています。公式HPはこちら

1937年にレスリー・コムズ2世が創設したスペンドスリフトファームは、名馬スペンドスリフトに由来する牧場で、当初127エーカーから始まりました。

1955年に高額で購入した名馬ナシュアが種牡馬として成功し、最盛期には約4000エーカーまで拡大し、シアトルスルーなど2頭のアメリカ三冠馬を繋養するなど黄金期を迎えました。

しかし1980年代後半に経営が悪化し倒産、敷地も大幅縮小。

その後所有者が変わり、2004年にウェイン・ヒューズが買収してマリブムーンやイントゥミスチーフの成功を背景に再び発展を遂げています。

見学の目玉はイントゥミスチーフ、そしてその代表産駒の1頭で2020年ケンタッキーダービー勝ち馬のオーセンティックなど。

…Sitting on over 1, 200 acres, we are the home to champions such as 146 Kentucky Derby winner AUTHENTIC, #1 General Sire INTO MISCHIEF, 4x Champion racehorse BEHOLDER & MONOMOY GIRL, and more. We are based in the heart of Horse Country and commit our business to the health and well being of our horses..

牧場到着から集合

スタリオンツアーの予約はvisithorsecountry.comから。1時間で$25のツアーです。

 

ビジターセンターが集合場所になるので、分岐を左へ向かいます。

 

ビジターセンターへ。厩舎も含め、建物は全体的にシンプルなファームハウス風のデザインで統一されていました。

大成功を収めているスタリオン牧場ですが、実際にはどこか農家風の落ち着いた雰囲気。派手さを抑えた控えめな外観が印象的です。

 

一方で、内部は現代的で、洗練された空間になっていました。

館内には、AuthenticKentucky Derby優勝時のレイやゼッケン、蹄鉄が床に展示されています。他の牧場で見たことのない演出でした。

 

応接室の展示コーナー。中央に置かれているのは、AuthenticKentucky Derby優勝トロフィーです。

さらに、同馬が制したBreeders’ Cup Classicの優勝トロフィーも展示されていました。

 

他にも、現地観戦した2024年のStephen Foster Handicapを制したKingsbarnsのゼッケンを発見(左から2番目)。

 

種牡馬見学のために、厩舎へ移動します。

 

厩舎の中央にはNashuaの銅像。

 

種牡馬見学

種牡馬を見学順に紹介します。

 Vino Rosso (2015)

父Curlin 母の父Street Cry

種付け料(2025年): $12,500

BCクラシック、ゴールドカップ勝ち馬。初年度産駒から、「重賞で活躍した産駒数」と「ブラックタイプ獲得馬数」は全米上位。産駒にBottle of Rouge(デルマーデビュータントステークス)。

馬房には、シアトルスルーのネームプレートが残されていました。

 

Vekoma (2016)

父Candy Ride 母の父Speightstown

種付け料(2025年): $35,000

メトロポリタンH(G1)など重賞4勝。初年度産駒からG1級の活躍馬を送り出し、急速に評価を高めている人気種牡馬。2024年の新種牡馬リーディング北米1位。

 

National Treasure (2020)

父Quality Road 母の父Medaglia d’Oro

種付け料(2025年): $40,000

プリークネスS(G1)、ペガサスWC(G1)勝ち馬。先行力と持続力を武器にトップレベルで活躍し、Quality Road後継として高い期待を集める。産駒デビュー前。

 

Yaupon (2017)

父Uncle Mo 母の父Vindication

種付け料(2026年): $25,000

BCスプリント(G1)勝ち馬。無敗で重賞戦線を駆け上がったスピード型で、短距離志向の産駒を出すことが期待されるUncle Mo後継種牡馬。2025年の新種牡馬リーディング北米1位。

 

Jimmy Creed (2009)

父Distorted Humor 母の父Citidancer

種付け料(2025年): $7,500

マリブS(G1)、パットオブライエンS(G1)勝ちのスプリンター。Casa Creed(キーンランドターフマイルなどG1・2勝)やPrivate Creedなどを輩出し、芝・ダート双方でスピード型の活躍馬を出す堅実な中堅種牡馬。

 

Goldencents (2010)

父Into Mischief 母の父Banker’s Gold

種付け料(2025年): $10,000

BCダートマイル連覇の名馬。By My Standards(スティーブンフォスターS)などを出し、堅実に活躍馬を送り出している。

 

Zandon (2019)

父Upstart 母の父Creative Cause

種付け料(2025年): $10,000

ブルーグラスS(G1)勝ち馬。ケンタッキーダービー3着などクラシックで安定した実績。Upstart後継として期待される新鋭種牡馬。産駒デビュー前。

 

Maximus Mischief (2016)

父Into Mischief 母の父Songandaprayer

種付け料(2025年): $15,000

2歳時にG2レムゼンS勝ち。Into Mischief後継として期待される存在。2025年にINTREPIDO(American Pharoah S)とRAGING TORRENT(Metropolitan Handicap) がG1馬に。

Kingsbarns (2020)

父Uncle Mo 母の父Tapit

種付け料(2025年): $20,000

ルイジアナダービー(G2)を無敗で制覇。良血背景とスピードを兼備し、Uncle Mo後継候補として注目される。

現地観戦したStephen Foster Stakesを勝利して以来の再会となりました。

初年度となる2025年には196頭に種付けを行い、Book Fullになるほどの人気を集めたようです。現役時代の実績と血統背景を考えても期待は大きく、産駒の活躍が楽しみになります。

 

Thousand Words (2017)

父Pioneerof the Nile 母の父Pomeroy

種付け料(2025年): $12,500

ロスアラミトスフューチュリティ(G2)勝ち馬。American Pharoahと同じ父系でクラシック血統として配合妙味あり。

 

Mo Donegal (2019)

父Uncle Mo 母の父Pulpit

種付け料(2025年): $10,000

ベルモントS(G1)勝ち馬。スタミナと持続力に優れ、クラシックディスタンス向きの産駒が期待される。

 

Cross Traffic (2009)

父Unbridled’s Song 母の父Cure the Blues

種付け料(2025年): $7,500

メトロポリタンH(G1)勝ち馬。Nyquist(ケンタッキーダービー勝ち馬)を輩出し、実績ある中堅種牡馬。

 

Arabian Lion (2020)

父Justify 母の父Distorted Humor

種付け料(2025年): $20,000

ペガサスS(G2)勝ち馬。三冠馬Justifyの後継としてスピード能力を評価され、早期始動型として注目。

 

Taiba (2019)

父Gun Runner 母の父Flatter

種付け料(2025年): $30,000

ペンシルベニアダービー(G1)、マリブS(G1)勝ち馬。完成度と成長力を兼ね備え、Gun Runner後継の有力株。

 

ここから、別の厩舎へ移動します。

 

Dornoch (2021)

父Good Magic 母の父Big Brown

種付け料(2025年): $40,000

ベルモントS(G1)勝ち馬。クラシック勝ちに加え高い先行力を武器とし、良血背景からも大きな期待を集める新種牡馬。

 

Omaha Beach (2016)

父War Front 母の父Seeking the Gold

種付け料(2025年): $35,000

アーカンソーダービーなどG1・3勝。2025年までにデビューした3世代が好成績で、芝・ダート兼用タイプとして評価される。代表産駒にKopion(Churchill Downs’ Derby City Distaff)、Nevada Beach(Goodwood S)。

 

Cyberknife (2019)

父Gun Runner 母の父Flower Alley

種付け料(2025年): $25,000

アーカンソーダービー、ハスケルS勝ち。Gun Runner後継として期待される有力種牡馬。

 

Jackie’s Warrior (2018)

父Maclean’s Music 母の父A.P. Five Hundred

種付け料(2025年): $35,000

チャンピオンスプリンター。H.アレンジャーケンズSなどG1多数勝利で、スピード特化型の後継として期待。2026年に初年度産駒がデビュー。

 

Authentic (2017)

父Into Mischief 母の父Mr. Greeley

種付け料(2025年): $25,000

ケンタッキーダービー、BCクラシックを制した年度代表馬。Into Mischiefの後継として非常に高い人気を誇る。

2025年までにすでに3世代がデビューしており、成績自体は決して悪くありません。

実際にG1馬も送り出しているのですが、現役時代の実績や、種牡馬入り当初に寄せられていた期待の大きさを考えると、やや物足りなく映ってしまう部分もあります。

種付け料も2026年には15,000ドルまで低下しています。

 

Into Mischief (2005)

父Harlan’s Holiday 母の父Tricky Creek

種付け料(2025年): $250,000

現代アメリカを代表する大種牡馬。通算リーディングサイアー複数回獲得。Authentic(ケンタッキーダービー、BCクラシック)、Life Is Good(ペガサスWCなどG1・4勝)など多数のG1馬を輩出。

 

Forte (2020)

父Violence 母の父Blame

種付け料(2025年): $45,000

ブリーダーズカップジュヴェナイル(G1)、フロリダダービー(G1)などG1・5勝を挙げた2歳王者。完成度の高さと持続力を武器にクラシック戦線で活躍し、Violence後継の最有力候補として期待される。

 

種牡馬の数が多く、馬の見学だけで1時間。

種付け場の見学はありませんでした。

ビジターセンター前には、Malibu Moonの銅像。

 

見学を終えて

今回この牧場を訪れた最大の目的は、Into Mischiefに会うことでした。

2019年から2025年まで、実に7年連続で北米リーディングサイアーを獲得。これはBold Rulerに並ぶ北米最長タイ記録となります。

種付け料は$250,000。日本円にするとおよそ4,000万円という、まさに北米競馬界を代表する超一流種牡馬です。

応接室のテーブルには、Into Mischief産駒のG1ウイナーたちの名前が埋め込まれており、この種牡馬の偉大さを実感させられました。

なお、これは見学に訪れた2025年3月時点の展示なので、現在はさらに名前が増えているはずです。今後どこまで記録を伸ばしていくのかも非常に楽しみですね。

AuthenticLife Is Goodなど、後継争いも熾烈です。

ただ、2025年時点の成績では、Ashford Studで繋養されているPractical Jokeがサイアーランキング6位につけており、一歩リードしている印象があります。

すでに晩年に差しかかっていますが、2025年のKentucky DerbyBelmont StakesTravers Stakesを制したSovereigntyや、2歳G1のBreeders’ Cup Juvenileを無敗で勝利したTed Noffeyなど、毎年のように世代の主役級を送り出している点も圧巻です。

本馬の圧倒的な実績に見合う“真の後継”が現れるのか、その行方には引き続き注目していきたいと思います。

(つづく)

ケンタッキー州牧場見学の記事です▼

Medaglia D’oroにストリートセンス。Jonabell Farmの牧場見学。

北米最強フライトライン。Lane’s End Farmの牧場見学。

米国三冠アメリカンファラオとジャスティファイ。Ashford Stud の牧場見学。

名種牡馬カーリン。Hill ‘n’ Dale Farmの牧場見学。

Constitution、Life is Good、Tiznowなど。WinStar Farmの牧場見学。

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