ケンタッキー州レキシントンの牧場見学④
大種牡馬カーリン(Curlin)の繋養されているヒルアンドデールファーム(Hill ‘n’ Dale Farms)の紹介です。
目次
Hill ‘n’ Dale Farms
公式HPはこちら。
見学ツアーの申し込みも直接牧場のHPから行います。
牧場の起源は1827年。オーナーは色々と変わったようですが、近年カナダのヒルアンドデールファームに買収され大改修を行い、現在の姿となっています。
牧場到着からツアー開始
牧場はレキシントンの中心から車で北東へ30分と微妙に遠く、クールモア、ダーレーとは逆方向です。
見学目的でレキシントンに滞在する場合は、ホテルの場所にはご注意ください。


見学は午後1時スタート。種牡馬と牧場の見学合わせて2時間、料金は$50です。
私は帰りの飛行機が迫っていたので、前半の種牡馬見学のみ参加しました(一部返金)。
ツアーがスタートし、まずはカーリンの像で記念撮影。
奥に見える立派な建物が種牡馬棟になっています。


種牡馬見学
見学した種牡馬を紹介します。
早速、主役のカーリン登場です。
Curlin (2004)
父Smart Strike 母の父Deputy Minister
種付け料(2024年): $250,000(北米最高額)
現役通算16戦11勝(うちG1 7勝)、主な勝ち鞍はBCクラシック、ドバイワールドカップ。2007年、2008年エクリプス賞受賞。

現役時代のみならず、種牡馬としての活躍も凄まじいです。
- 2022年、2023年にそれぞれ3頭の直仔がエクリプス賞受賞
- 後継種牡馬はすでに20頭以上で、日本でもパレスマレスが猛威を振るう予感
- 孫の代も2頭がケンタッキーダービーを勝利。Good Magic産駒のMageとKeen Ice産駒のRich Strike

牧場の方は、キング・カーリンと呼んでいました。
栗毛の王様というと、日本ではオルフェーブルですが、キャラクターが全然違いますね。
カーリンは穏やかで、佇まいからも気品を感じます。
多くの参加者に囲まれても、近くからカメラを向けられても、オルフェとは違ってどっしり構えていました。

毛艶も良く、20歳とは思えないほど。すでに系統を確立したも同然で実績十分ですが、まだまだ現役で頑張れそうです。(この写真では少し気が立っているよう)

個人の想像ですが、アメリカのゴリゴリ系ダート馬らしくない柔らかさがあるので、カーリンの血は日本にも適応しやすいと思っています。
競馬場のパドックで栗毛の柔軟な歩様の馬を見つけると、Curlin産駒だったことがよくありました。素人目でも簡単に見分けがつくほどなので、Curlinは自分の特色を濃く伝える種牡馬なのかもしれません。
Good Magic (2015)
父Curlin
母の父Hard Spun(Danzig系)
種付け料(2024年): $125,000
G1 2勝(BCジュベナイル、ハスケル招待H)。代表産駒にMage(ケンタッキーダービー他)、Muth(アーカンソーダービー)など。


Good MagicはCurlin後継の中でも実績は抜けていて、すでに種付料も高騰しています。
2024年は、アーカンソーダービーのMuthに、パシフィッククラシックのMixtoと、Good Magic産駒のG1勝利に2度も立ち会うことが出来ました。
縁を感じていたので、会えて嬉しかったです。これからもっと活躍馬を出していって欲しいです。
Maclean’s Music (2008)
父Distorted Humor 母の父Unbridled’s Song
種付け料(2024年): $40,000
現役時は1戦1勝。代表産駒にG1 5勝でエクリプス賞のJackie’s Warrior。


Kantharos (2008)
父Lion Heart(Storm Cat系)
母の父Southern Halo(Halo系)
種付け料(2024年): $15,000
現役時は3戦3勝。2023年北米サイアーランキング11位。


World of Trouble (2014)
父Kantharos
母の父Valid Expectations
種付け料(2024年): $5,000
G1 2勝(カーターH他)。ターフで活躍。前述のKantharosの後継。初年度産駒が2歳戦で13勝。

Charlatan (2017)
父Speightstown(父の父Gone West)
母の父Quiet American(Fappiano系)
種付け料(2024年): $50,000
現役時は5戦4勝(G1 2勝)にサウジカップ2着。初年度産駒が2025年デビュー予定。
2020年のアーカンソーダービー(G1)は2レースに分割されましたが、ナダルともう一頭の勝ち馬がこのシャラタン。名前の意味はペテン師。本当に、騙されているかのような圧勝劇でした。

シャラタンは馬房の外で馬体を見せてもらえました。多少はうるさくしていましたが、ピッカピカの毛艶に筋肉量が豊富な好馬体。種付け料の高さからも、牧場の期待を感じます。

Ghostzapper (2000)
父Awesome Again 母の父Relaunch
種付け料(2024年): $75,000
G1を4勝(BCクラシック他)。14頭もの産駒がG1勝ち。BMSとしても優秀で、米国三冠馬Justify、社台SSで繋養されているドレフォンの母の父です。


ゴーストザッパーには、飴をあげて良いよとのこと。触れることができてめちゃくちゃ嬉しかったです。


Loggins (2020)
父Ghostzapper 母の父Blame
種付け料(2024年): $7,500
現役時代は2戦1勝。ブリーダーズフューチュリティ(G1)ではForteと一騎打ちの末2着。初年度産駒は2025年に誕生予定。


Violence (2010)
父Medaglia d’Oro 母の父Gone West
種付け料(2024年): $60,000
現役時代は4戦3勝(G1 1勝)。代表産駒は2023年のフロリダダービーを勝ったForte。

この馬は、本当に危ないから近づくなと警告がありました。デビュー前から段階からバイオレンスだったんでしょうね。
Midnight Lute (2003)
父Real Quiet(Fappiano系)
母の父Dehere(Deputy Minister系)
種付け料(2024年): $10,000
BCスプリント連覇などG1を3勝。代表産駒はG1を5勝したMidnight Bisou(ノーザンファームがキンランド繁殖牝馬セールで550万ドルで落札しています)。

Army Mule (2014)
父Friesan Fire(父の父A.P.Indy)
母の父Crafty Prospector(ミスプロ系)
種付け料(2024年): $25,000
現役時代は3戦3勝、カーターH(G1)勝ち。2022年に初年度産駒がデビューしたばかり。

以上で種牡馬の見学は終了です。
牧場施設の見学
最後に、種付け棟の見学です。





およそ1時間で私の見学はここまで。
他の参加者は、後半の牧場施設の見学へトロリーに乗って向かいました。元は歴史のある牧場ですからね、古い橋とか、色々あるようです。
なんだかクールモアと似た雰囲気を感じました。共通点は、歴史の長さ、建物が石造り、お金をたくさん持っていそうなど。
カーリンに会えて
Hill ‘n’ Dale Farmを訪れることにした理由はもちろんカーリンです。
アメリカでは、Tapit(2001)、Into Mischief(2005)、Curlin(2005)の3頭が2000年代産の代表種牡馬であり、それぞれ系統を広げています。
日本競馬で例えると、ディープ、ハーツ、キンカメというイメージ。
カーリン自身まだまだ現役ですが、近い将来、Curlinの3×4などのインブリードを見る機会は増えるでしょうし、強力なニックスが発見されるかもしれません。
教科書に出てくるような名馬であり、実際に見たことは財産となるはずです。

また、カーリンは出資馬ルージュシュエットのお父さんであり、僅かな縁も感じさせてもらっていました。
カーリン産駒に出資できたことが当時は嬉しくて仕方ありませんでしたし、おそらく繁殖に上がるので、この縁を大事にCurlinの血を継いだ仔にも出資できれば良いなと思います。
牧場見学まとめ
アメリカの競馬、牧場は種牡馬産業の色が強いですが、Hill ‘n’ Dale Farmは完全なる勝ち組です。
Curlin、そして後継種牡馬の筆頭であるGood Magicも繋養しているところに、Hill ‘n’ Dale Farmの盤石さを感じました。
↓産駒がG1で活躍中のGood Magic。

これまで見学した牧場は、どこも1頭はカーリンの血を引く種牡馬を抱えていましたが、後継争いという点では2歩リードと言えます。
(晩年に超大物の直仔が現れるという通例もありますが。)
そういえば、常にカーリンとリーディングを争っているイントゥミスチーフ、ガンランナー、そしてタピットの後継種牡馬は1頭もいませんでした。
偶然か、プライドか、高いからなのか、その辺りはまた行く機会に恵まれた際に質問してみようと思います。
(つづく)
ケンタッキー州レキシントン牧場見学の記事です▼